事業を立て直すためにおこなわれる事業再生には、裁判所がかかわる法的再生と、債権者と債務者が交渉することで裁判所を介さずおこなえる私的再生があります。ただしそれぞれにメリットがある一方で、デメリットもあるためどちらが現状に合った方法か理解した上で決断する必要があります。ここでは私的再生の種類と共に、どういったメリットやデメリットがあるのか詳しくご紹介します。
私的再生の3つの種類
私的再生は裁判所を介さず、当事者同時の話し合いによって事業の再生をおこなう方法です。もちろん当事者同士で交渉してもいいのですが、債権者が多く説明会などが必要な場合や私的再生についての手続きまで手が回らないといった場合には、専門家である弁護士の手を借りることも可能です。そして、私的再生には3つの方法があります。
私的整理ガイドラインによる私的再生
私的再生をおこなう際に必要となる手続きを規定した、私的整理ガイドラインを利用する方法です。法的な効力はありませんが、ガイドラインにそって私的再生をおこなうことで双方が納得して話し合いをおこなうことができます。
中小企業再生支援協議会を通じておこなう私的再生
全国47都道府県に設置されており、中小企業や小規模事業者の相談に応じて私的再生を支援するのが中小企業再生支援協議会です。経営改善計画の作成の支援などをおこなうことで経営改善を手助けしてくれます。関係する企業には融資の優遇などもおこなわれます。
事業再生ADRによっておこなう私的再生
ADR事業者が中立の立場で私的再生を支援する方法です。ADRとは、訴訟によらないで当事者同士の話し合いでおこなわれ、調停する立場の人が間に入ります。事業再生における調停をする立場の存在がADR事業者です。話し合いで仲裁人が判断を下します。民事再生と同じような流れになりますが、法的再生よりもスピーディに話し合いが進みます。
私的再生のメリット
私的再生をすることには、以下のようなメリットがあります。
再生をしていることが周囲に知られずに済む
裁判所では事業再生をしていることが公開されますが、私的再生は当事者同士の話し合いなので、社会的認知を避けることができます。これによって会社が経営難であるということを知られずイメージダウンを避けられます。
迅速な手続きが可能になる
法的再生の場合は裁判所を通すため、どうしても時間がかかります。再生が決定し実施しても実現までには2,3年は必要となることがほとんどです。私的再生の場合はスムーズに交渉が進めば1年ほどで実現することも可能です。
柔軟な対応が可能
法的再生と違い、経営者の希望に添った再生をおこなうことが可能になります。また債権者と交渉ができるため、債権者が同意してくれれば返済方法などの変更も柔軟にすることができるのも大きなメリットです。
コストの削減が可能
法的再生では裁判所に予納金を納めなければなりませんし、弁護士の依頼料なども必要になります。もちろん私的再生でも弁護士など専門家のアドバイスを受けることは可能ですが、経営者側でコストを削減することが可能なので倒産のリスクが低くなります。
私的再生のデメリット
私的再生のデメリットには、以下のことが挙げられます。
債権者が不公平感を抱く可能性がある
私的再生では経営者の希望に添った再生が可能な分、債権者には不利となる条件になることが少なくありません。そのため同意が得られず法的再生に移行しなければならなくなることもあります。
担保が差し押さえられる可能性がある
法的再生では財産については経営者が自由にできませんが、裁判所が認めなければ動かすことができません。ですが私的再生では法的拘束がないため、金融機関に差し押さえられたとしてもそれを中止させることができないデメリットがあります。